鉄鋼事業部が、なぜAIに取り組むのか―スタートアップとの協業による新たな価値提供

自動車業界の電動化や現地調達・現地生産の広がりを背景に、鋼材を取り巻く環境は変化しています。こうした中、ホンダトレーディング鉄鋼事業部が考えたのが、「鉄を扱うことに加えて、何ができるか」という問いでした。その一つの答えが、スタートアップとの協業によるAI・DXです。なぜ鉄鋼事業部がAIに取り組むのか。鋼板SCM課の工藤牧子さんと、協業先であるOne StepSの田山凌汰さんに、取り組みの背景と現在地を聞きました。

事業環境の変化と新たな取り組み

ホンダトレーディングは、原材料の調達から生産支援、リサイクルまで、ものづくりを幅広く支えています。鉄鋼事業部でも、鋼材の供給に加え、集中購買や鋼板加工など、バリューチェーン全体に関わってきました。
その一方で、自動車業界では電動化が進み、各国で現地調達・現地生産が広がるなど、鋼材を取り巻く事業環境は変化しています。こうした変化を踏まえ、鉄鋼事業部では、従来の商流の延長にとどまらない新たな価値提供を模索してきました。

「鉄を扱うことに加えて、自分たちに何ができるか」。そう考えて2年ほど前に始めたのが、外部のスタートアップと組むオープンイノベーションです。製造業のお客さまの役に立つ技術を探す中で行き着いたのが、AI・DXの領域でした。この取り組みは、モビリティを軸に提供価値を広げているホンダトレーディング全体の方向とも重なっています。

AI・DXの取り組みを、スタートアップとの協業で

第一弾では、製造業向けAIソリューションを手がける株式会社スカイディスクと協業し、AIで生産計画を最適化する取り組みを始めました。この取り組みを通じて、ツールを紹介して終わりにするのではなく、お客さまとの対話から課題を整理し、PoC(概念実証)から導入まで一緒に進めることの重要性を学びました。

続く第二弾の相手が、AIエージェント「SellPro(セルプロ)」を手がけるスタートアップ、株式会社One StepSです。同社とは、2024年に鉄鋼事業部が実施したアクセラレータープログラムで初めて出会い、翌年春、IT関連の展示会で再会しました。
鉄鋼事業部が着目したのは、資料作成や議事録作成など、日常業務の負担をAIで軽減するという発想でした。鉄鋼事業部自身も日々の資料作成に多くの時間を費やしており、同様の課題を抱えていたことから、具体的な活用場面を検討し、協業に向けた取り組みを進めました。

One StepSの田山凌汰CEOは、鉄鋼事業部との協業を次のように振り返ります。

田山さん(One StepS 代表取締役CEO):ホンダトレーディングさんとの協業で印象的なのは、意思決定のスピードです。スタートアップの事業フェーズを理解いただき、担当者の皆さんが目的や課題を共有しながら、迅速に対応してくださいます。月次で中長期の方向性を共有し、週次で商談状況や課題を確認するなど、協業の進め方も実務的で、スタートアップとしてありがたく感じています。

左から:One StepS・AIエージェント事業部 髙野さん、同・田山代表取締役CEO、ホンダトレーディング鋼板SCM課スタートアップチーム・工藤さん、同・莫さん

まず自分たちで使うー鉄鋼事業部の関わり方

ここからは、鉄鋼事業部がこの協業にどう関わっているのか、具体的に伺いました。

現在の役割分担を教えてください。
工藤さん:鉄鋼事業部は、製造業のお客さまとの関係性や業界への理解を生かし、AI活用に課題を持つお客さまとOne StepSさんをつないでいます。提案にも一緒に伺い、お客さまの課題を整理しながら活用方法を検討します。One StepSさんには、SellProの提供からPoC、導入後の運用支援までを担ってもらっています。私たちが信頼関係を生かして商談の機会をつくり、One StepSさんがプロダクトで価値を提供する。両社の強みを生かした役割分担です。

― 鉄鋼事業部でも、実際にSellProを活用しているそうですね。
工藤さん:
はい。まず自分たちがユーザーとしてSellProを日々使い、疑問や要望をOne StepSさんに伝えています。実際に使っているからこそ、お客さまにも自分たちの実感をもとに説明できます。ここが、単に製品を取り次ぐのとは異なる点だと考えています。

田山さん:製品に関心を持っていただいても、実際の業務で継続的に使うところまで進む企業は多くありません。鉄鋼事業部さんでは、SellProを日常業務に取り入れ、利用者として改善点も共有してもらっています。実際の使用感を踏まえてお客さまに説明してもらえることは、協業を進めるうえで大きな意義があります。

工藤さん

田山さん

通常業務と並行し、専任ではないメンバーが取り組むには、難しさもあるのではないですか。
工藤さん:日々の通常業務があるからこそ、月次・週次の定例を設け、期日を決めて進めています。月次では、田山さんや鉄鋼事業部長、IT部門の課長も交えて中長期の方向性を確認し、週次では、進行中の案件やお客さまとの確認事項など、実務的な内容をすり合わせています。

今後は、どのような展開を目指していますか。
工藤さん:
現在、鉄鋼事業部のお客さまにおいてSellProの導入が始まり、営業・企画部門の資料作成の効率化と提案品質の向上を目的に活用されています。今後は、個別のソリューション紹介に加え、お客さまの業務課題を起点に、AIを活用できる領域や優先して取り組むテーマをともに整理し、One StepSさんによるAIコンサルティングにつなげていく予定です。その一環として、One StepSさんと一緒にAI関連の展示会への出展も予定しています。

お客さまの課題を起点に

昨年度、鉄鋼事業部が出展していたのは製造業系の展示会でした。今年度は、9月末の福岡を皮切りに、業種を問わないAI・生成AI関連の展示会へ、年度内に5回の出展を予定しています。製造業のお客さまとの接点を中心としてきた鉄鋼事業部にとって、新たな領域での挑戦となります。

展示会で提案するのは、SellProという製品そのものだけではありません。One StepSさんが提供するAIコンサルティングもテーマとし、資料作成のような身近な業務から、お客さまごとの課題に応じたAI活用まで、両社で連携して提案していきます。

橋本さん
ホンダトレーディング 鋼板SCM課 スタートアップチーム・橋本さん

お客さま、そしてスタートアップの皆さんへ

工藤さん:AIは変化の速い分野なので、スピードを意識して取り組むことが重要だと考えています。お客さまの課題に合った提案を行うため、今後も優れた技術やアイデアを持つスタートアップとの協業を進めていきます。製造業のお客さまと向き合ってきた経験を生かし、AIDXを通じた課題解決を支援していきたいと考えています。ぜひお気軽にご相談ください。

今後の出展情報

名称
AI博覧会 Fukuoka 2026
会期
2026年9月30日(水)、10月1日(木)
会場
博多国際展示場&カンファレンスセンター
主催
株式会社アイスマイリー
公式サイト
https://aismiley.co.jp/ai_hakurankai/

来場者事前登録はこちら

AI博覧会 Fukuoka2026 One StepS × ホンダトレーディング 共同講演

~「もうこれがないと仕事ができない」今すぐ実践できる、企業のAI活用事例~
ホンダトレーディング鉄鋼事業部がAIエージェントを活用し、社員の業務効率化においてどのような業務変革を実現できたかをお話しし、企業のAI導入のハードルとその乗り越え方、導入効果までを事例ベースで解説します。

  • 日時:2026年9月30日(水) 13:50〜14:20 (セッション番号:1B-5/カンファレンスB会場)
  • 登壇者:株式会社ホンダトレーディング 鉄鋼事業部長 宮崎 正義・株式会社One StepS 代表取締役 田山 凌汰
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